母にすべて相続させたいのに相続放棄はNG? よくある勘違いと注意点を浜松の相続弁護士が解説
「父が亡くなったので、母にすべての財産を相続させたい。」
そのように考えた子どもが、
「それなら自分は相続放棄をすればよいのでは?」
と思われることがあります。
しかし、この考え方には注意が必要です。
実際には、良かれと思って行った相続放棄によって、かえって相続手続が複雑になってしまうケースも少なくありません。
今回は、相続放棄に関するよくある誤解と注意点について解説します。
相続放棄は「相続分を譲る手続」ではない
まず知っておきたいのは、相続放棄は
「自分の相続分を他の相続人に譲る手続」ではない
ということです。
相続放棄をすると、その人は法律上、はじめから相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、
「母にすべて相続させたいから相続放棄する」
という考え方が、必ずしも期待どおりの結果につながるとは限りません。
子が相続放棄すると誰が相続人になるのか
例えば、
- 父が死亡
- 相続人は母と子1人
というケースを考えてみましょう。
子が相続放棄をすると、
法律上、その子は最初から相続人ではなかったことになります。
すると、次順位の相続人に相続権が移ります。
具体的には、
- 父の父母(祖父母)
- 父の祖父母などの直系尊属
が存命であれば、その方々が相続人になります。
また、直系尊属がいない場合には、
- 父の兄弟姉妹
が相続人となります。
つまり、
母だけが相続人になるのではなく、
母と祖父母、
あるいは
母と父の兄弟姉妹
が共同相続人となる可能性があるのです。
思わぬ相続トラブルにつながることも
このような場合、
母は新たに相続人となった祖父母や兄弟姉妹と遺産分割協議を行わなければなりません。
もし、
- 疎遠になっている親族がいる
- 連絡先が分からない
- 相続人が遠方に住んでいる
といった事情があると、手続は大幅に複雑になります。
子としては、
「母の負担を減らしたい」
という善意から相続放棄をしたにもかかわらず、
結果としてかえって母の負担を増やしてしまうこともあるのです。
母にすべて相続させたい場合はどうすればよい?
このようなケースでは、
必ずしも相続放棄をする必要はありません。
相続人が母と子だけであれば、
遺産分割協議において
「すべての財産を母が取得する」
と合意すれば足ります。
子は相続人のままでありながら、自身は財産を取得しないという選択が可能です。
この方法であれば、
祖父母や父の兄弟姉妹が新たに相続人となることはなく、
母と子だけで円滑に相続手続を進めることができます。
相続放棄を検討すべきケースとは
もちろん、相続放棄そのものが悪い制度というわけではありません。
例えば、
- 借金が財産より多い場合
- 保証債務を引き継ぎたくない場合
- 相続財産に関与したくない場合
などには、有効な選択肢となります。
もっとも、
「財産を特定の家族に集中させたい」
という目的であれば、相続放棄ではなく遺産分割協議で対応すべきケースも少なくありません。
浜松市でも増えている相談
近年はインターネット上で相続放棄に関する情報を簡単に調べられるようになりました。
その一方で、
「相続放棄をすれば母に全部相続されると思っていた」
「相続放棄をしたら叔父や叔母が相続人になってしまった」
というご相談も増えています。
浜松市や静岡県西部地域でも同様のケースは少なくありません。
まとめ
相続放棄は、単に自分の相続分を他の家族へ譲る制度ではありません。
相続放棄をすると、その人は法律上最初から相続人ではなかったことになるため、場合によっては祖父母や兄弟姉妹へ相続権が移ることがあります。
その結果、
「母にすべて相続させたい」
という希望とは異なる結果になることもあります。
相続放棄をするかどうかは、財産の内容や家族関係によって適切な判断が異なります。
安易に手続を進める前に、一度専門家へ相談することをおすすめします。
相続放棄については、こちらのコラムもご覧ください。
この記事は、浜松市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所(浜松事務所)の弁護士が監修しています。
同事務所では、浜松・静岡県西部地域を中心に、遺言、相続、遺産分割、相続放棄、成年後見などに関する法律相談に対応しています

